2008年9月 9日
太鼓がくれた温故知新
先ごろ、2尺5寸ほどの古い太鼓が、めぐりめぐって我が社にやってきました。ふっくらと豊かな丸みのある胴の革をめくると、中には丁寧な中彫りがほどこされ、太鼓の製作年と張り替え年が克明に墨書されていました。もっとも古い元号は元禄十二年で、西暦にすると1699年。よくもまあ300年以上も生き延びてここまでやってきたかと思うと、つくづくこの太鼓がいとしくなります。
1600年代といえば、江戸時代初期。最近読み終えたばかりの小説「出星前夜」も、この時代を背景とした物語です。何気なく書店で手にした本の表紙を開いた巻頭に長崎・島原半島の地図があり、口之津、南有馬、有家、布津、深江、島原、小浜、千々石など、私が40代に営業に回った地名が懐かしく目に飛び込んできたのが、この本との出会いでした。しかし物語は私の思い出にある穏やかな島原とは遠くかけ離れ、キリシタンや農民、漁民らが、徳川幕府や島原藩主・松倉重政の圧政に蜂起した「島原の乱」を題材にした過酷な歴史小説でした。虐げられた人々が、残虐な弾圧の中で何を考え、どう生きたのか。あらためて人間の本質を考えさせられたこの本と、島原の乱からおよそ50年後に製作された太鼓とがほぼ同じ時に手元にやってきたことにも、不思議な縁を感じています。
さて、それよりもさらに1200年ほど前に創建された伊勢神宮の内宮周辺一帯で、先週末の5日から7日まで、今年も恒例の「神恩感謝・日本太鼓祭」が行われました。今年で6回目となったこのイベントも、年を追うごとにいい形に育ってきました。これも主催者である伊勢福さんをはじめ、神恩太鼓、近藤克二さん、そしておかげ横町の皆さんをはじめとする地元の皆さんの情熱とご尽力、そして身銭を切って参加される出演者の心意気の賜と思います。皆さん、本当にお疲れ様でした。来年もまた五十鈴川のたもとでお会いしましょう。
元禄12年(1699年)製作の太鼓
出星前夜
伊勢 日本太鼓祭 大太鼓の橋本美和さん
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