2008年12月22日
パリと東京で嬉しい対面
12月のはじめ、三女に男の子が生まれました。私には次女の長男に次いで、二人目の孫です。昔から「孫は子供よりかわいい」といいますが、どうやら私も例外ではないらしく、「この忙しい時期」にと周囲からちょっと白い目で見られながらも、先週、思いきってパリに住む娘のところに向かいました。語学留学のためにフランスに渡り、そのまま現地の男性と結婚して二年。ずいぶんハラハラさせられたこともあった娘でしたが、「太陽」(フランス語でティオ)と名づけた元気な孫と対面した瞬間、娘を信じていてよかったと、大きな安堵感に包まれました。
聞くところによるとフランスも少子化の傾向にあり、産婦の夫は出産1カ月前から休暇をとって分娩・育児の補助をすることができ、また移民を含めてすべての産婦の分娩費用は無料。ただし、出産は病気ではなく人間の自然の営みという理由で、病院で出産の場合も分娩三日後には退院させられるそうです。そのためにも夫の協力が必要ということでしょうか。ともかく仲睦まじい娘夫婦の暮らしぶりを見て、あらためてフランスのお国柄を実感した次第です。
わずか一日半のパリ滞在でしたが、時間をみつけて二年前に日仏文化会館に納入した太鼓を検品。明年の締め直しを約束して帰国の途につきました。
20日、成田に着いたその足で、鼓童十二月公演東京公演へ。今回は古典の演目がプログラムに並び、中堅からベテラン勢の熱演が舞台の空気をきりりと引き締めていました。中でも見留君の大太鼓は絶品で、採点するとすれば120点。控え目な性格で、自分から前に出ようとすることのない彼ですが、鼓童入団当時から成長ぶりを見守ってきた私には、この上なく嬉しい舞台でした。
広く太鼓界を見渡せば、次の世代の大太鼓打ちとして顔が浮かぶのは、上田秀一郎君、木村優一君、山部泰嗣君あたりか。また今年度の文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞が決定した佐藤健作君も有望です。新しい年の、皆さんのますますの精進が楽しみです。
2008年12月16日
慌ただしい日々の中、「イタリアで日本の太鼓」
あれよあれよという間に毎日が過ぎて、今年もあと半月足らず。こうしたせわしない中、嬉しいできごとがありました。
一つは、国立劇場で長く「日本の太鼓」のプロデューサーを務めていた現国立能楽堂プロデューサーの茂木仁史さんが2003年に出版された「入門 日本の太鼓」が、このほどイタリアで翻訳・出版されたこと。この本がどんな経緯でイタリア人の目にふれて出版の運びとなったかは本人にも不明とのことですが、3年前に突然発行元の平凡社宛にイタリアの出版社から翻訳・出版の許諾依頼が届いたそうです。オリジナルの新書版の二倍ほどのサイズの本の表紙は、一心不乱に太鼓を打ち込む、ふんどし姿の今福優さん。いかにも日本の太鼓を感じさせるこの表紙がイタリアの書店に並んでいることを思うと、なんとも胸がわくわくします。今、ヨーロッパ各国は静かな和太鼓ブームで、あちこちにプロの太鼓チームも出現しています。中でもイタリアはかつてルネッサンスが興った芸術性の高い国であり、今後、日本の太鼓がどう成長していくのか楽しみなところです。皆さんもイタリアを訪れる機会があったら、ぜひ本屋さんの店先をのぞいてみてください。
イタリア翻訳「入門 日本の太鼓」
2008年12月 1日
今日から師走
明年に開催される全国高校総合文化祭や日本太鼓ジュニアコンクールに先立ち、このところ各地でその予選コンクールが開催されています。私も11月23日、西東京地区の高校予選大会に招かれ、審査員を務めさせていただきました。出場したのは19校の和太鼓部の皆さん。どの学校も1、2年生が中心、しかも入学してから初めてバチを握ったという生徒さんも多く、短期間のうちに舞台に立てるほどの技術をマスターするのは、本人も指導される先生方も大変なご苦労だったことと思います。しかし、その甲斐あって、いずれも見事な演奏ぶり。中には成人チームも及ばないような熟達した演奏を聴かせた高校もあり、驚かされるやら、嬉しいやら。何よりもこうしてたくさんの若者が真剣に太鼓と向き合っている姿に、深く胸を打たれました。
大会終了後、レンタルした太鼓を積んだトラックに便乗して深夜の高速道を北陸へ。途中、長野で思いがけない積雪に遭遇し、本格的な冬が近いことを思い知らされましたが、高校生たちの熱気の余韻でしょうか、なぜかじんわりと胸があたたかい北帰行でした。
もう一つ、太鼓とかかわる若者とのふれあいは29日。近年、急速に和太鼓が浸透してきた台湾から林さんが訪ねてきました。太鼓についての論文を書かれるとのことで、日本の和太鼓芸能の草分けとなった「佐渡國鬼太鼓座」のことや、現在の日本の太鼓界の状況などを熱心にメモしていました。
台湾といえば、2001年に開催した「台湾国際鼓楽節」で1951個の太鼓を同時演奏してギネス認定を受けています。記録はさらに2007年、2571個の太鼓を同時演奏した岩手県の「盛岡さんさ」によって塗り替えられたものの、太鼓に対する国民の関心はますます高まっている様子。太鼓を通じ、今後、日本と台湾との交流が盛んになっていくのが楽しみです。
さて、今日から師走。「師走」という言葉の響きだけでもなんとなく慌ただしさを感じる一ヶ月。忙しさに流されず、身も心も引き締めて充実した一年の締めくくりの一ヶ月としたいものです。