2012年11月 5日
鼓童の舞台に新たな境地を見る
11月1日から11日まで、香川県琴平町の金丸座で、坂東玉三郎特別公演が開催されています。金丸座は正式名称を「旧金比羅大芝居」といい、天保6年に建てられた、現存する中では日本最古の芝居小屋だそうです。玉三郎さんがここで公演するのは初めて。そして第二部では玉三郎さんが芸術監督を務めている鼓童の太鼓で玉三郎さんが踊るという趣向。初日にお邪魔した小屋は玉三郎さんが目当てと思われるご婦人の姿も多く、いつもの鼓童の会場とはちょっと異質な、華やいだ雰囲気がただよっていました。
第一部は、玉三郎さんの舞踊で「雪」と「鐘ケ岬」の二題。先日、人間国宝となった玉三郎さんの踊りは息を呑むほどのあでやかさで、指先、つま先、視線の先まで神経がはりめぐらされているような緊張感が心地良く舞台を支配します。続く二部、鼓童が演奏する「いぶき」は大太鼓、長胴、平太鼓、締太鼓、桶胴と、音質の異なる太鼓を組み合わせ、大太鼓の深い音色がアンサンブル全体を大らかに包み込むような安心感の中、玉三郎さんの情緒豊かな踊りが曲の物語性を高めます。打ち手もベテラン、中堅、若手を上手に組み合わせ、それぞれが見せ場をつくりながら、ベテランはそれなりの風格を、若手は将来を期待させる新鮮さを表現。そんな舞台に心を奪われつつ、玉三郎さんは太鼓を、音楽というより音の表現をもって物語を紡いでおられるのではないか。そして今この舞台だけでなく、50年先、100年先を見据えながら鼓童の演奏力を高めるための演出をされているように感じました。長く鼓童の舞台を見てきた私にも、2006年に初めて玉三郎さんと共演した「アマテラス」以来、鼓童の空気感が変化してきたことがなんとなく伝わってきます。設立から30年、鼓童のこれからがますます楽しみになってきた金丸座の舞台でした。
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