2014年11月30日
西ヨーロッパの太鼓事情を視察
長く交流のあるドイツの太鼓チームが結成20周年を迎え、その記念公演に出席しがてら、久し振りにオランダ、ベルギー、フランス、イギリスにも足を伸ばして各国の太鼓事情を視察してきました。
(アムステルダムにて)
オランダでは30年前に鼓童の亡くなられた班長河内さんの紹介で「サークルパーカッション」に納めた十数張の太鼓と対面。きれいに並べられた締、長、桶などを目にして、かつて自分が手がけた太鼓がよく手入れされて今も良い音を出していることを聞き、懐かしさと嬉しさがこみ上げてきました。
彼らの拠点は、北海の海岸沿いにあるハーグから、電車とバスを乗り継いでようやく到着する郊外の美しい町。その晩は「太鼓が欲しい」と我が社に声をかけてくれたミカエルさんと食事を共にし、今さらですが、なぜ日本の太鼓に興味をもったのかを訪ねてみました。
(ミケルさんと)
彼の語るには、「日本の太鼓の音は生まれて初めて聞いた音。魂のこもったその音を聞いた瞬間、この音をヨーロッパの人々にも聞かせたい。この美しい音を西洋の音に変えたい」と思ったそうです。そして自分たちの演奏技術と太鼓を買ってくれる人(スポンサー)を探し、1994年に「将来、伝説になるような音をつくって欲しい」と我が社に太鼓製作を依頼されたのでした。
あれから30年、オランダで和太鼓といえば、まず彼のチームの名があがるほど活躍してきたサークルパーカッション。「今までいろんな音を発展させてきたが、決して伝統をなくしてはならない」と言うミハイルさんの言葉が強く胸に残りました。
次に訪れたドイツで、いよいよモニカさんのチームの20周年公演。
(モニカさんと)
客席とステージが一体となって日本の響きが盛り上がる様子を間近に目にし、和太鼓が確かに海外に根づいていることを実感。いささか心もとない一人旅でしたが、行く先々で心あたたまる光景にふれ、風ひとつひかずに元気に帰国した11月の旅でした。
(現地コーディーネター&通訳の ミチヨ・ブノーさん)
2014年11月15日
それぞれの芸風、また楽しからずや
前回のブログでお知らせしたように、8日と9日、伊勢神宮内宮の門前町である「おかげ横町」一帯で毎年恒例の「神恩感謝太鼓祭」が、今年も12団体の出演により、賑やかに行われました。毎年おなじみの三重県「熊野鬼城太鼓」や、昨年は台風の影響で出演できなかった「八丈太鼓」、今年初出演の「英哲風雲の会」「鼓童」など、多彩な顔ぶれによる競演。それぞれの演奏を聴き、打ち手の芸風を表現する三つの型があるように感じました。
一つは「太鼓打ち」。豪快に太鼓を打ち込むタイプ。二つ目は「太鼓奏者」。文字通り、きれいに音を紡いで太鼓を「奏でる」タイプ。そして三つ目が「太鼓芸人」で、根っからの太鼓好き、聴き手とひとつになって芸のキャッチボールができる人。そんなことを思いながらあらためて舞台を眺めるのも、また楽しからずや。こうした個性ゆたかな競演が楽しめるのも、太鼓芸能が成熟してきた証しと思います。
ところで、この太鼓祭で不思議な体験。おかげ横町の「太鼓櫓」で鼓童の見留さんが「大太鼓」を演奏した際、その響きはこれまでに聴いたことのないほど強く骨太く、櫓の天井に反射して轟々と鳴り響き、思わず太鼓に見入ったものでした。「いやあ、良く鳴るなあ」。翌日、その太鼓は革が破れ、無惨な姿に。そういえば、昨日のとびっきりの響きは、太鼓が極楽往生に臨んだ断末魔の絶叫だったのかも。太鼓に生命が宿っているとするなら、まさにその最期を看取ったような、稀有な体験でした。
同じ日、福島では斎藤通夫さん率いる「愛宕陣太鼓連響風組」の結成20周年記念公演。「連なる響き風のごとし」を自認する斎藤さんらしい全力疾走の舞台だったと聞き、さらに25周年、30周年記念公演を楽しみにしています。
神恩感謝太鼓祭に出演された皆さん、愛宕陣太鼓連響風組の皆さん、お疲れさまでした。
2014年11月 6日
11月、日本各地に太鼓の音が響く
11月に入り、朝晩はめっきり冷え込むようになった今日このごろ、かねてより棚上げになっていた6尺9寸の大太鼓を、ようやく阿蘇市の太鼓堂に納めることができました。実に足かけ数年の大仕事、途中何かとアクシデントに見舞われながらも、ようやく堂内に鎮座の運びを遂げ、何はともあれ依頼主さんに感謝、感謝です。どうもありがとうございました。
そんな幸先の良い九州行きで始まった今月は、8日・9日に伊勢神宮周辺で「神恩感謝日本太鼓祭」、同じく9日に福島県では斎藤通夫さん率いる「愛宕陣太鼓連響風組結成20周年記念公演」、群馬県では藤岡市制施行60周年記念事業を兼ねる「太鼓エモーション」、16日には東京で関根まことさんらによる「太鼓笑人めでたい公演<狐狂伝来〜ぞめき〜>」、東京都太鼓連合15周年記念公演「東京の太鼓」、長野県で今福優さんや加藤木朗さんによる「凸拍子」、21日には宮城県で髙橋兄弟による「atoa段-DAN-」と、目白押しの舞台。
各公演のチラシが次々に届く中、北海道の「北海道くしろ蝦夷太鼓保存会」さんからは、このほど刊行された新書「くしろの太鼓」が送られてきました。同保存会を中心に北海道釧根地域の太鼓の歴史を克明に追った貴重な記録書で、執筆・編集された皆さんのご苦労を思いつつ、ぜひ多くの皆さんに読んでいただけたらと願った一冊でした。