2015年1月28日
先達としての意地を見た「英哲 音楽会」
1月21日から25日まで(23日は休演)、東京の世田谷パブリックシアターで、林英哲さんのコンサート「英哲音楽会(えいてつおんがくえ)」が開かれました。パブリックシアターでの連続公演は今年で3年目。毎回、「太鼓でこれほどのものを見せてくれるのか」と、非の打ち所のないほどの見事な舞台を繰り広げてくれるのですが、今回はさらに、英哲さんの「太鼓打ち」としての舞台への意地、自負のようなものが強く感じられました。
ご存知のように、英哲さんは日本で最初に太鼓ソロ奏者としての道に踏み出し、43年にわたってつねに先頭を走り続けてきた人です。手本とする人が誰一人いない中、もがき、悩み、苦しみながら、伝統ではない新しい「音楽としての太鼓」を模索し、創造してこられました。今、日本には多くの太鼓チーム、太鼓奏者がいますが、この太鼓文化をさらに大きく育てるには、先達としての「自分が頑張っていくしかない」と、まるでそんな思いがこもったような迫力が、演目全7曲すべてに出ずっぱりで打ち込む姿からひしひしと伝わってきました。まさに「ぐうの音(ね)も出ない」気魄。その英哲さんの意を汲んだ「風雲の会」の一糸乱れぬ統制、さらに打ち手の邪魔をすることなく清楚で奥行きのある空間を演出する音響と照明。すべて完成されたそれらが互いに支え合ってピラミッドのように一つの舞台を創り上げていく充足感。「一体、何がそうさせるのか」と問いかけながら、まばたきも惜しんでステージに見入り、聴き入った、あっという間の2時間。英哲さん、風雲の会の皆さん、そしてスタッフの皆さん、お疲れさまでした。
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