2018年11月19日
「銚子はね太鼓」の皆さん、ますますのご活躍を
前回11月7日のプログと話が前後しますが、実は11月1日、大変嬉しいできごとがありました。日本経済新聞朝刊の最終ページ文化面に、千葉の「銚子はね太鼓」代表の宮崎義政さんの記事が掲載されたのです。この面は新聞各紙の文化欄の中でも特別に重みのあるページで、過去、太鼓に関連する記事としては、昭和57年に私の父が大太鼓のつくり手として、続いて平成元年に岩手県陸前高田で太鼓フェスティバルを立ち上げた河野和義さんが取り上げられましたが、太鼓芸能の打ち手としての登場は宮崎さんが初めて。太鼓文化に携わる者として、まことに嬉しい記事でした。
銚子はね太鼓は江戸時代(元治元年1864年)から銚子に伝わる郷土芸能で、漁師町ならではの荒々しい打芸が特徴。「はね太鼓」という名称の通り、二人1組になった打ち手が一つの太鼓を抱え、跳ねては打ち、打っては転げ、時には太鼓もろとも空を切り、まさに組んでほぐれつの激しい力業を繰り広げる。その特徴ある郷土芸能を銚子だけに閉じ込めておくのはもったいないと、30年にわたる並々ならぬ努力の末に、今では第一級の太鼓芸として世界各地で公演。世界中に絶大なファンをもつ、かのマイケル・ジャクソンをも「アンコールを」といわしめたほどの太鼓ですが、ここまで来るにはもちろん茨も多く、本来は祭りの太鼓を舞台芸能化するにあたり、師匠から破門された経緯も。しかし新しいことを切り拓くには障害が多いのは当たり前と割り切り、信じる道をただまっしぐら。その熱意を知っているだけに、こうして活字となった嬉しさはひとしお。豪快に笑う笑顔の中に、意志の強さを宿したまなざしが光る宮崎さん、どうかこれからもますますのご活躍を!
2018年11月 7日
霜月を迎えて。
今月も月初めは、「加賀一の宮」とも称される白山比咩神社の「お一日参り」に参拝。「この一ヶ月をどうかよろしく」と手を合わせ、神様にさらなる精進を誓って霜月が始まりました。
さっそく2日は、先日5尺7寸の大太鼓を奉納した新潟県長岡市の寶徳山稲荷大社の「神幸祭(よまつり)」へ。神幸祭とは、毎年この日に執行される恒例の行事で、大社最大の祈願祭。全国から集った善男善女が1対の紅ろうそくに願い事を書き記し、夜の20時から境内の特設祈願書で順次点火していくのですが、次第にろうそくの炎は数を増し、深夜0時の大太鼓の音が響くころには、夜空を焦がすばかりに赤々と燃えさかり、この上ない幽玄の世界。こうした厳かな場で、空気を振るわせながら鳴り響く太鼓の音はひとしおの清澄感があり、まさに神と交わっているような不思議な感覚。これから1年の祈願成就を祈りつつ、夜明けを迎えた一夜でした。
その3日夕方は、横浜の赤レンガ倉庫で、篠笛の村山二朗さんの活動30周年コンサート。今の時代を象徴する新しい音楽を取り入れた「謝恩祭」で、久々に研ぎ澄まされた笛の調べを堪能したひと時。
さらに翌4日夕方は姫路の書写山圓教寺で、陽介さんの『ARAYASHIKI〜阿羅耶識』コンサート。ここはかつてトム・クルーズ出演の映画「ラストサムライ」のロケにも使われた場所で、ロープウエイで登る険しい山頂の会場に響く太鼓は孤高の響きであたりを圧し、得がたい貴重な経験をさせていただいたコンサートでした。
こうして月の初めからあちこちで入魂の響きにふれた11月、来週以降も国内外で繰り広げられる太鼓イベントを楽しみに、元気を養っていこうと思います。