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2021年12月20日

今年、心に残った本

 いよいよあと十日あまり。怒濤に揉まれたような2021年が、まもなく幕を下ろそうとしています。今年はいつにも増して月日の流れが速かったような。年のせいか、コロナのせいか、思いがけない係争のせいか、、、。いずれにしても、あっという間の一年だったように思います。

 そうした日々の中でも読書欲は衰えず、年末にあたってこの一年の間に強く心を動かされた3冊の本を紹介します。

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 まず1冊目は、今村翔吾の「塞王の楯」。鉄砲鍛冶の集団「國友衆」と石工の集団「穴太衆(あのうしゅう)」との相克の物語で、どんな鋼も石も貫くような鉄砲の製作に命を燃やす鉄砲職人と、どんな鉄砲の弾にも砲弾にも砕かれることのない城壁の建築に執念を燃やす石工職人たちとの、いわば「鉾」と「楯」の戦いが展開される。鉄砲鍛冶たちの努力により、伝来してからわずか数十年のうちに連射式の鉄砲が開発された恐るべき探究心や、石工たちの石の伐り出し、石の「目」を見極める目、石を削る技術、石積の方法、最も重要な「要石」の話など、次々に興味深い記述が続き、自分も52年にわたってものづくりに従事してきただけに、読み進むほどに体が熱くなるような興奮を覚えました。

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 2冊目はヒュー・マクドナルドの「巡り逢う才能 音楽家たちの1853年」。1853年の春から翌年にかけてのわずか10カ月間を舞台に、音楽の長い歴史の中でのほんの一瞬といえる時間の中で、ベルリオーズやリストやヴェルディ、ワーグナー、ブラームスら、音楽史上名だたる音楽家たちの活動や交流や楽曲が誕生した経緯などが描かれている。まさにこの時代だったからこその人間模様の面白さ、出会いの面白さにひきつけられ、一気に読んだ1冊でした。

 そして3冊目はヨアヒム・ラートカウの「木材と文明」。人類が木材を利用して数千年、人間が、現在まで生き延びてきたのは、ひとえに「木材」の恩恵があったから。人類は木材によってさまざまな道具をつくり、人類絶滅の危機が訪れた氷河期などの気候変動の中でも木材を燃やして暖をとり、木材でつくった家で外敵から身を守り、やがて木材を使った車輪を発明したことで人や物の輸送を容易にし、文明がいっきに進化。とにかく木材は人類にとっていかに重要なものかということが、壮大なスケールで語られています。しかし、その木材は、今後どのような道をたどるのか。地球環境の悪化が叫ばれている今、木材に対する考察は誰にとっても大いに関心があることではないでしょうか。皆さんにもぜひお読みください。

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