2024年9月 7日
昭和22年 父 義雄 製作の虫送り桶太鼓
太鼓のロープを丁寧に外し、革をめくると、そこに「昭和22年」の年号が書かれていました。それは、私が生まれた年でもあります。その瞬間、まるで過去と現在がつながるような不思議な感覚に包まれました。薄暗い工房の中、戦後の混乱期に父が黙々と太鼓を作り上げる姿が目に浮かび、胸がじんと熱くなりました。
昭和22年(1947年)といえば、物価統制が厳しく、革や素材の入手もままならない時代。それでも父は、自分の手で地域の伝統を守り、行事を支えようとしていたのだと思うと、その姿勢に改めて頭が下がる思いです。この太鼓は、単なる楽器ではなく、父の苦労と工夫、そして家族への思いやりが詰まった証です。
自分が生まれた年と同じ書印は、父と自分の人生がどこかで交差しているような、不思議な縁を感じました。革の内側に刻まれたあの時代の空気、父の手のぬくもり、そして家族と地域を大切に思う気持ちが、すべてこの一つの太鼓に宿っているように思えて、言葉にできない感謝と誇りが心に湧き上がります。そして、父の足跡と自分の原点が重なり合うのを感じ、自然と手を合わせたくなるような、静かな感動が胸に広がり、今もなお私を励まし続けてくれているのだと感じると、目頭が熱くなるのを抑えられません。