2025年3月 7日
太鼓の鼓動―アイデンティティを背負う音の力

先日、横浜市栄公会堂で行われた「三宅&鼓童」の公演を観た。そこには、ただの演奏ではなく、彼らが受け継ぎ、背負い、そして超えていこうとする“音の魂”があった。
三宅三兄弟が放つ一撃の凄まじさ。その一振り一振りに込められた覚悟と誇り。私はその音の強さを、ただ耳で聴くだけでなく、肌で感じていた。アイデンティティを背負う者の姿には、言葉を超えた力がある。それはまさに、身体と心で刻む音の芸――打芸の極みだった。
太鼓の妙とは何か。それは、人・バチ・音が織りなす一体感だ。ただリズムを刻むのではなく、打ち手の魂が音となって響き渡る。その瞬間、彼らと観客の境界が消え、会場全体が一つの鼓動となる。
轟く打撃音が、私の心を深く揺さぶった。ただの音ではなく、生きた証のように響くその音が、胸の奥にまで届いた。彼らが紡ぐ太鼓の音は、過去から未来へと受け継がれる“鼓動”そのものなのだと、改めて感じた。